ゴルフが上手くなりたければ、まずは「歩き方」から始めます
- 孝幸 平井
- 3 時間前
- 読了時間: 10分

~タイガー・ウッズに学ぶ、重力を味方につける「真の移動」とは~
〇はじめに:スイングの悩みは、駅のホームで作られている
突然ですが、あなたはご自身の「歩き方」を意識したことがありますか? 鏡の前でスイングチェックをする時間はあっても、ショーウィンドウに映る自分の歩く姿を凝視し、「なんて質の低い歩き方なんだ」と嘆く人は、残念ながらほとんどいません。
しかし、私は断言します。 あなたのゴルフが上達しない最大の原因、そして飛距離が落ちていく諸悪の根源は、練習場でのスイングではなく、日々の「歩き方」にあるのです。
「プロ、また大袈裟なことを。歩くのとボールを打つのは別物でしょう」 そう思われた方こそ、この先を読み進めていただきたい。なぜなら、その思考こそが、あなたが長年ゴルフの迷宮から抜け出せない理由そのものだからです。
ゴルフスイングとは、静止した状態から身体を回転させる運動ではありません。 重心を移動させ、そのエネルギーを回転に変換し、クラブヘッドへと伝える「移動運動」です。そして、人間にとって最も基本的かつ究極の移動運動こそが「歩行」なのです。
普段、重力に負けてペタペタと足を引きずるように歩いている人が、クラブを持った途端に、重力を利用したダイナミックな重心移動ができるはずがありません。
「歩き方」が変われば、スイングは劇的に変わります。逆に言えば、歩き方を変えずしてスイングだけをいじくり回すのは、基礎工事のされていない土地に高層ビルを建てようとするようなもの。崩れ去るのは時間の問題です。
今日は、少し厳しい視点で、あなたの「歩き方」と「ゴルフ」の関係について、メスを入れていきましょう。
〇第1章:一歩に「体重」を乗せられない人は、ボールに「気持ち」を乗せられない
私が街中やゴルフ場で多くのアマチュアゴルファーを見ていて、最も悲しくなる瞬間。それは、スイングのミスを見た時ではなく、その方が力なく歩いている姿を見た時です。
多くのゴルファー、特に飛距離に悩む方の歩き方には共通点があります。 それは、「一歩一歩に体重が乗り切っていない」ということです。
足を出してはいるものの、重心が後ろに残ったまま、ただ足先を前に置いているだけ。まるで、氷の上を恐る恐る歩くペンギンのようです。あるいは、重い荷物を背負わされ、地面に足を引きずられるように歩く、疲れたビジネスパーソンのようです。
この歩き方をしている時、身体の中で何が起きているか分かりますか?
股関節はロックされ、骨盤は後傾し、背骨の柔軟性は失われています。そして何より、「地面からの力」を全く使えていません。
歩行において、右足を踏み出した瞬間、体重のすべて(あるいはそれ以上)が右の股関節に乗らなければなりません。そこで地面をしっかりと踏みしめるからこそ、その反発で次は左足がスムーズに出るのです。
ゴルフスイングも全く同じです。 バックスイングで右足に体重が乗らなければ、ダウンスイングへのエネルギーは生まれません。フィニッシュで左足一本で立てなければ、ボールに体重は伝わりません。
歩く時に、一歩ごとに体重を完全に乗せ替えられない人が、スイングという高速運動の中で、一瞬にして体重移動を完了させることなど、物理的に不可能なのです。
「ボールが飛ばない」と嘆く前に、自問してください。 あなたは今朝、駅の階段を上がる時、しっかりと一段一段に体重を乗せていましたか? それとも、ただ足先だけで登っていましたか? その答えが、あなたの現在の飛距離の正体です。
〇第2章:膝を曲げて腰を落とすな。「高い重心」こそがパワーの源
では、理想的な歩き方、ひいては理想的なスイングの準備状態とはどのようなものでしょうか。 その最高の教科書が、全盛期のタイガー・ウッズです。
彼の全盛期の映像、あるいは現在の姿でも構いません。フェアウェイを歩く彼の姿を思い出してください。
威風堂々とし、まるで彼が歩くためにフェアウェイが存在しているかのような、圧倒的なオーラ。
しかし、私が注目してほしいのはその「雰囲気」ではありません。もっと物理的な「重心の位置」です。
タイガー・ウッズの歩き方は、驚くほど「重心が高い」のです。
日本のアマチュアゴルファーには、ある種の呪いがかかっています。
「腰を落とせ」「下半身をどっしりさせろ」という、昭和の根性論にも似た教えの呪いです。
その結果、多くの人が膝を曲げ、腰を落とし、低い重心で歩き、そして構えます。
はっきり申し上げましょう。これは間違いです。 膝を曲げて腰を落とした状態は、一見安定しているように見えますが、それは「居着いている(動けない)」状態です。
股関節の自由度が奪われ、スムーズな体重移動が阻害されます。相撲の立ち合いならいざ知らず、回転運動と移動運動を伴うゴルフにおいては、致命的な欠陥となります。
タイガーを見てください。 彼の膝は伸びやかに使われ、腰の位置は非常に高い位置にキープされています。
骨盤が高い位置にあるからこそ、足は振り子のように長く使え、股関節は自由に旋回できるのです。
「重心を低く」ではなく、「重心を高く」。 まるで頭のてっぺんから糸で吊り下げられているかのように、背筋を伸ばし、腰の位置を高く保って歩く。
これだけで、あなたの足取りは軽くなり、地面を「押す」感覚が芽生えてくるはずです。その「高い位置からの圧力」こそが、ボールを潰し、遠くへ飛ばすためのエネルギー源なのです。
〇第3章:タイガーの「撫で肩」に隠された、脱力の極意
タイガー・ウッズの歩き方から学ぶべき、もう一つの重要なポイント。 それは、「肩の力が完全に抜けている」ということです。
彼は胸を張り、堂々と歩いていますが、決して肩が怒っていません。いわゆる「撫で肩」の状態で、腕が重力に任せてダラリと垂れ下がっています。
歩くリズムに合わせて、腕が勝手に振られている。彼が意図して腕を振っているのではなく、身体の動きに腕が従属している状態です。
これに対し、飛ばないゴルファーの歩き方はどうでしょう。 常に肩に力が入り、少し上がっています。
ストレス社会の弊害かもしれませんが、首から肩にかけての僧帽筋が常に緊張し、腕を身体に引きつけてしまっています。
肩に力が入ったまま歩く人は、スイングでも必ず肩に力が入ります。 肩が力むと、腕と身体の連動性が断ち切られます。
クラブヘッドの重みを感じることができず、手先だけでクラブを操作しようとしてしまうのです。
タイガーのように、肩を落とし、腕をブラブラにさせて歩いてみてください。 最初は違和感があるかもしれません。
「だらしない」と感じるかもしれません。しかし、その「だらしない」感覚こそが、ゴルフスイングにおける「脱力」の正体です。
腕は、身体にぶら下がっているだけのロープのようなものです。 歩く時にそのロープを柔らかく揺らせる人だけが、スイング中にクラブを鞭(ムチ)のようにしならせることができるのです。
いかり肩で歩きながら「スイング中は脱力しましょう」などと唱えても、身体は言うことを聞きません。普段の歩行でできていないことが、緊張するティーグラウンドでできるわけがないのです。
〇第4章:歩き方を変えれば、スイングの「リズム」が変わる
ゴルフスイングにおいて「リズム」や「テンポ」が重要であることは、耳にタコができるほど聞かされているでしょう。
しかし、そのリズムをどこで作るのか? メトロノームに合わせてクラブを振れば良いのではありません。
リズムとは、足裏から生まれます。 右、左、右、左。 この歩行のリズムが、そのままスイングのリズムになります。
歩くのが下手な人は、リズムが一定ではありません。歩幅もバラバラ、着地の衝撃もバラバラ。そんな状態でスイングをすれば、テークバックのスピードも、切り返しのタイミングも、毎回狂ってしまうのは当然です。
私が提唱する「本来の歩き方」を身につけると、自然と歩行のリズムが整います。 骨盤がスムーズに旋回し、腸腰筋(上半身と下半身をつなぐ深層筋肉)が活性化され、足が勝手に前に出る感覚。これがいわゆる「推進力」です。
この推進力を持ったまま、ボールの前に立ってください。 歩くようにテークバックし、歩くように切り返す。 「チャー、シュー、メン」ではありません。「右、左」の2拍子です。
歩行の延長線上にスイングがあると感じられた時、あなたは初めて「力感」という呪縛から解放されます。
無理に振ろうとしなくても、歩くエネルギーがそのままクラブヘッドに乗り移り、ボールは勝手に飛んでいく。
それが、65歳を過ぎても、いや、歳を重ねるごとに飛距離を伸ばせる人の「秘密」なのです。
〇第5章:あなたは、間違った練習を「毎日数千回」繰り返している
少し怖い話をしましょう。 もし、あなたの今の歩き方が、重心が低く、膝が曲がり、肩に力が入った「飛ばない歩き方」だとしたら。
あなたは、ゴルフ練習場に行かない日でも、通勤中や買い物中、あるいは家の中で、毎日数千回、数万回と「飛ばないスイングのための予行演習」を繰り返していることになります。
「歩く」という行為は、人間が一生で最も多く繰り返す動作です。 その動作が錆びついていれば、週に一度や二度、練習場で数百球打ったところで、悪い癖が抜けるはずがありません。多勢に無勢です。
逆に考えれば、これはチャンスでもあります。 歩き方を変えるということは、日常生活のすべてを「ゴルフ上達のためのトレーニング」に変えることができるということです。
クラブを振る必要はありません。
明日の朝、一歩目を踏み出すその瞬間から、あなたのゴルフ改革は始まります。
重心を高く。 みぞおちから足が生えているような感覚で。 肩の力を抜き、腕の重みを感じて。 一歩一歩、地面を踏みしめ、その反力を楽しむように。
そうやって駅まで歩いた後のあなたは、今までとは全く違う筋肉の張りを感じるはずです。それが、眠っていたあなたの「飛距離のエンジン」が動き出した証拠です。
〇終わりに:美しい歩行こそが、美しい弾道を生む
ゴルフ場において、最も美しい瞬間とはいつでしょうか。
ナイスショットをした瞬間? カップインした瞬間? 私は、プレーヤーがショットを終え、次の地点に向かって颯爽と歩き出す、その後ろ姿だと思います。
良いショットを放つ人の後ろ姿は、例外なく美しい。 背筋が伸び、足取りは軽く、それでいて大地をしっかりと掴んでいる。その姿は、生命力に溢れています。
ゴルフの上達を、小手先の技術論や、最新のギアだけに求めないでください。 もっと根源的な、あなた自身の「動物としての機能」に目を向けてください。
「歩く」という、あまりにも当たり前の動作の中にこそ、あなたが探し求めていた「飛ばしの極意」のすべてが詰まっています。
タイガー・ウッズの歩き方を真似てください。 それは形だけの模倣ではありません。彼の身体使い、重力との付き合い方、そしてゴルフに対する姿勢そのものをインストールする作業です。
もし、あなたがこの文章を読んで、「自分の歩き方はどうなんだろう?」「どうすれば正しく歩けるようになるんだ?」と疑問に思ったのなら、すでにあなたは上達への入り口に立っています。
しかし、長年染みついた「歩き癖」や「身体の錆」は、自分一人で気づき、修正するのは至難の業です。鏡を見ても分からない、感覚的なズレが必ずあります。
TenSwingスタジオでは、クラブを握る前に、まずはあなたの「歩き方」を見させていただきます。 そこから、なぜあなたが飛ばないのか、なぜ腰が痛くなるのか、そのすべてを紐解き、あなた本来の、ダイナミックで美しい動きを取り戻すお手伝いをします。
「たかが歩き方」ではありません。 「されど歩き方」です。
その一歩を変える勇気を持つゴルファーだけが、まだ見ぬ景色へと到達できるのです。 私たちは、あなたが「ゴルファーとして、そして人間として美しく歩き出す」その瞬間を、共に迎える準備ができています。
TenSwing 増田 哲仁&公認コーチ一同
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